プロフィール
氏名:塩多政喜(しおだまさき)
氏名:塩多朋子(しおだともこ)
職種:漆芸作家
工芸名:輪島塗
工房名:輪島塗塩多漆器工房
所在地:〒928-0014 石川県輪島市山ノ上町ソ部39番地
電話・FAX:0768-23-0885
携帯電話:080-8698-7916
E-mail:shioda@eos.ocn.ne.jp
輪島塗塩多漆器工房は、日本伝統工芸展などの公募展で活動してきた塩多政喜(*①きゅう漆と沈金)と石川県立輪島漆芸技術研修所で*②指物ときゅう漆を学んだ塩多朋子で、お客様のご注文に応えて漆器を制作します。
日本の漆は艶が美しく、丈夫で、縄文時代からクリと共に育てられていましたが、育てるのも漆を掻き取るのも手間がかかり、消えかけているので、山を開墾し、ウルシの木を植え、育てることもしています。ぜひ、ウルシの森や工房に遊びにきてください。
輪島漆の再生、復活を目的とする「輪島漆・集いの森」の事務局を務めています。
漆器のご用命、輪島漆「集いの森」のご連絡は、上記の連絡先までお願いいたします。
※①きゅう漆…漆を塗る事。
※②指物…鋸、鉋、ノミなどを使って板材を組み合わせて箱などを作る事。
☟塩多朋子さんのQ&A☟
①仕事の内容について教えてください。
木工と漆塗りの仕事をしています。
石川県立輪島漆芸技術研修所の専修科で漆芸全般を、榡地(そじ)科で漆塗りと木工を学び、一品物の美術品を作る技術を習いました。
主に、ご注文を取って仕事を進めています。
海外のお客様にも対応しています。
その他は、商品の企画をし、ある程度まとまった数の漆器を作る仕事もしています。
木工の仕事は、鉋(かんな)などを使う指物(さしもの)という仕事をしています。
お椀やお盆などの丸いものを作りたい時は、製図を描いて、木地師の方に頼んで作ってもらい、漆塗りをして漆器に仕上げます。
麻布や和紙を使った乾漆という技法でも作ります。
絵やデザインも習ったので、自分でデザインや模様を考え、蒔絵師さんや沈金師さんに仕事を頼むこともあります。
②この仕事を選んだきっかけを教えてください。
小さな頃から物を作るのが好きでしたが、最初は、ピアニストになりたいと思っていました。
20代の頃、日本の伝統的な文化や地方の文化、日本の農業や林業の不振に心を痛め、少しずつ、勉強していました。
しかし、大学卒業後は、法律事務所で働きました。
ある時、新聞で、表面がごつごつした漆器の展覧会が紹介されていて、興味を持って見に行ったところ、木や漆の美しさに感動しました。
その感動を、会場にいた職人さんに伝えたら、自分でお椀を作ってみることを勧められました。
お椀をどうやって作るのか、自分でもできるなら、やってみたいと思い、月1~2回くらい通っているうちに、だんだん、漆塗りの仕事が好きになり、一生の仕事にしたいと思いました。
③修業を開始するまでの経緯を教えてください。
私は幸運にも、職人さんに体験することを勧めてもらい、低い垣根を飛び越えただけでした。
残念ながら、その職人さんは生活が苦しく、私の面倒を毎日のように見られなくなり、カルチャーセンターや漆芸教室に通うようになりました。
しかし、月3回くらいしか習えないので、もっと、本格的に学びたいと思って、色々探して、石川県立輪島漆芸技術研修所の存在を知りました。
輪島で漆塗りを習いたいなら、塩多慶四郎さんに習うと良いですよ、と紹介状を書いてもらい、弟子入りをお願いしました。
しかし、作家活動や仕事が忙しかったため、断られました。
研修所で学びながら、分からないことが出てきたら、質問に来る様に言われました。慶四郎先生に教わっているうちに、三男の政喜と親しくなり、結婚しました。
結婚後も、研修所での勉強を続けられましたが、出産や育児もあり、満足に勉強したり、修業したりできなかったのが実際のところです。
研修所で木工を灰外達夫先生や高柳修一先生などから学びながら、形を慶四郎先生に直してもらったり、教えてもらったりしました。
漆塗りや研ぎについても慶四郎先生に教えてもらったことが、大きな影響を受けています。
④修業時代の生活はどうでしたか。
灰外先生や高柳先生、慶四郎先生に教えてもらうのが、楽しくて仕方がありませんでした。
好きなことは苦にならないと言いますが、いつも時間が足りなくて、睡眠時間が満足に取れなかったのがつらかったです。
生活はいつも大変でした。
できるだけ、まとめて家事をし、忙しく立ち回り、節約してしのぎました。
⑤修業期間について教えてください。
研修所を卒業して、さらに勉強を続けましたが、事情があり、途中で勉強を続けられなくんなってしまいました。
義父の慶四郎は、若い時、行商し、ご注文を取りながら、漆器を作りました。しかし、世の中にプラスチック漆器が出て、本物の漆器を買っていただけなくなりました。
自分の中に何も残らなかった絶望を味わい、作家活動の生活に入りました。しかし、夫は、商売の経験がない状態で、作家になりました。
その結果、そばで見ていて、経営も苦しく、どうしたら好きな仕事で食べられるようになるのか、考えるようになりました。
研修所を卒業しても、誰かに弟子入りしても、最終的には、自分で考え、食べられるようにならないといけません。
それで、最初は、夫の漆器をどうしたら売れるか、ということを考えたり、カタログを作ったり、フェイスブックをしたりしました。今では、自分の作品を作り、原価計算をし、営業をして、ゆっくりしたペースですが、一つ一つ仕事を進めています。
⑥独立後の生活はどうですか。
色々な人に会って、作品を見てもらい、営業をし、仕事を取ってきました。
まだ、原価計算や経営のことが良く分からず、赤字が続きました。
やがて、原価計算の本を読み、経営のことも勉強するようになり、エクセルでシミュレーションして、赤字にならない時給や経営にたどり着きました。
人との出会いがあり、その人の求めるものを勉強することで、一人で考えて作っていた時と違って、世界が広がりました。
難しさもありますが、勉強することは嫌いではないので、楽しんで作っています。
⑦独立後の収入面について教えてください。
経営を一歩間違えると、赤字になってしまうので、貯金があると良いと思います。
経済状態によって、作るものも変わってくると思います。
⑧今後の目標や実現したいことはなんですか。
今までは、ご注文の仕事をこなすので精一杯で、自分自身の作りたい作品がなかなか作れませんでした。
今後は、経済状態を安定させてから、自己表現の作品を作って、発表したいと思います。
ただし、自己表現ばかり追い求めてしまうと、使いたい、使ってみたい、と思ってもらえるような物作りから遠ざかってしまうので、使ってくださる方のことを想像しながら作る事や、御用聞きをして作る事も、続けたいと思っています。
書道やお花、茶道など、学びたいこともたくさんあります。
⑨職人を目指す人達へメッセージをお願いします。
芸は人なり、と教わりましたが、技術だけを覚えるのではなく、世の中の様々な事に興味を持って、総合的に学ぶことも大切ではないかと思います。
私は、大学卒業後、漠然と、国際交流の仕事がしたいと思い、色々探しましたが、なかなか仕事が見つかりませんでした。
そこで、英語を使った仕事、と探したら、たまたま、法律事務所に勤めることになりました。
残念ながら、約2年半でやめることになりましたが、この社会人の経験が後に役に立ちました。弁護士さんも自営業であり、お客様とのやり取りが大切です。信頼関係を築けないと、お金をいただく仕事はなかなかできません。
物を作ることも大切ですが、人との信頼関係を築くことに最も神経を使います。
人に喜んでもらうもの作りになるには、技術だけではなく、人間性を高めることも大切ではないかと思います。
絵を描くことも、ものを作るうえでは大切だと思います。
それから、本を読むことも大切だと思います。分からないことが出てきたら、本を読んだり、調べたりして、自分が作りたいものを少しずつ形作り、解決する作業も出てくると思います。
⑩その他のお話について。
義父は、仕事は見て盗め、という考え方でしたが、研修所で多くの生徒さんを教えていたこともあり、私には、分かりやすく教えてくれました。
「習うより慣れろ」というのが塩多家の家訓で、「慣れろー、慣れろー」と良く言われました。
最初からうまい人はいない、反復練習をしているうちに、自然と身に着き、上手になるとのことでした。
灰外先生も、高柳先生も、皆、厳しい世界を生き抜いてきた先生たちだったので、いつも、ぴりっと厳しい雰囲気が漂っていました。
自分で考え、経験しないと分からないので、とにかく、やってみることが大切だと思います。
SNSリンク
Shioda Wajima-nuri Urushi Studio (Masaki and Tomoko Shioda)
作品の紹介
[wc_row]
[wc_column size=”one-half” position=”first”]
沈金箱「風薫(かぜかおる)」
塩多政喜作 1985年日本伝統漆芸展出品作
縦16.0㎝ 横27.0㎝ 高13.0㎝
[/wc_column]
[wc_column size=”one-half” position=”last”]
沈金盛器「風」
塩多政喜作 1990年現代美術展出品作
縦28.0㎝ 横28.0㎝ 高6.0㎝
[/wc_column]
[/wc_row]
[wc_row]
[wc_column size=”one-half” position=”first”]
桐嵌込樟料紙箱
( きりはめこみくすのきりょうしばこ)
塩多朋子作 2001年作 石川県立輪島漆芸技術研修所蔵
[/wc_column]
[wc_column size=”one-half” position=”last”]
沈金パネル「ダルメシアン」
縦12.2㎝ 横13.7㎝ 厚1.0㎝
[/wc_column]
[/wc_row]
曲輪造溜塗盛器( まげわづくりもりき)
塩多朋子作 2001年作 石川県立輪島漆芸技術研修所蔵
[wc_row]
[wc_column size=”one-half” position=”first”]
[/wc_column]
[wc_column size=”one-half” position=”last”]
[/wc_column]
[/wc_row]
黒塗沈金椀「春秋(しゅんじゅう)」径12.9㎝ 高6.2㎝
[wc_row]
[wc_column size=”one-half” position=”first”]
[/wc_column]
[wc_column size=”one-half” position=”last”]
[/wc_column]
[/wc_row]
弁柄朱塗沈金椀「春秋(しゅんじゅう)」径12.9㎝ 高6.2㎝