特定発明者動向調査

Posted by:Celsia23 LLC Posted on:11月 17,2016

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人材をスカウトしたい。

共同開発先を探している。

自社技術のの障害となるようなテーマをやっているようだ。

 

などで、悩まれたことはありませんか?

 

「どこの」「誰が」「何を」やっているかを特許情報から取得する方法の紹介です。

 

【調査事例】

調査対象者として、シャープ株式会社に勤務する久保真澄 氏を取り上げさせて頂きました。

具体的に、久保真澄 氏が、どんな組織で、どのような立場で、どのくらいの規模で、どのような技術を、どのくらいの期間にわたって担当し、どんな実績があるかを特許情報から調査することを目的とします。

 

調査技術分野:

シャープ株式会社AND筆頭G02F(国際特許分類:物理学 光学 光の強度、色、位相、偏光または方向の制御)=5,843件

 

調査機関:

公開特許発行年 1993年1月1日~2016年5月9日

 

【調査内容】

調査分析は、

①勤務企業の全社研究開発組織

②全社研究開発組織上の位置と規模

③実績Ⅰ(特許出願状況)

④実績Ⅱ(特許網形成状況)

⑤担当技術及び⑥他の出願人との関係、などの項目について行いました。

 

 

①勤務企業の全社研究開発組織


最初に、調査対象分野(筆頭IPC=G02F)を担当している研究開発組織を把握する目的で、R&D構造図分析を行いました。その結果、発明者同志の結びつきの強いチーム(発明者群)が340群抽出されました。発明者ツリーとして表1に結果の抜粋を示します。

 

担当技術の欄には、各チームの技術内容を説明するため、各チームが行った特許出願群の上位2つのIPCの定義文を記載した。また、リーダの担当技術の欄には、更に公開特許の要約文のワードのうち出現頻度の高いワードを付記しました。

 

活動が活発な上位チームは、

チーム番号005:

液晶表示、液晶表示パネル、液晶表示素子、アクティブマトリクス基板、表示及び投影等に関する技術(105件)

チーム番号002:

液晶表示、アクティブマトリクス基板、アクティブマトリクス、表示、検査及び透過等に関する技術(94件)

チーム番号009:

液晶表示素子、液晶表示、高分子分散、液晶素子、液晶複合膜、ポリマー分散及び製法等に関する技術(91件)

チーム番号001:

液晶表示、液晶表示パネル、基板、駆動、防止、反射、半透過、焼付及び液晶表示素子等に関する技術(78件)

チーム番号013:

表示素子、表示、液晶光学素子、表示パネル及び三次元画像表示等に関する技術(62件)

 

等が挙げられます。

久保真澄 氏は最上位のチーム番号005に属し、マネージャとして位置づけられています。

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表1 発明者ツリー

 

②全社研究開発組織上の位置と規模


調査対象者の久保真澄 氏は、勤務企業の全社研究開発組織のなかの【チーム番号005】に所属し、マネージャ的立場にあります(表2)。チームの構成員は、公開特許情報として表面化している人数として、マネージャ久保真澄 氏1名と、7人のリーダ的発明者と、26人のスタッフ的発明者の合計38名が抽出されています。【チーム番号005】は、全社研究開発組織のなかで、構成員数及び公開特許件数ともにトップのチームとなっています。

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表2 久保グループの発明者ツリー

 

③活動実績Ⅰ(特許出願状況)


図1は、久保真澄 氏とそのスタッフの活動実績を発明者vs出願年件数として示したものです。90年代初頭から研究開発をスタートさせ、1998年と2004年に活動のピークがあり、最初のピークは久保真澄/鳴瀧陽三グループ、次のピークが久保真澄/山本明弘グループとなっています。2009年以降活動が極端に減少しており、何らかの、例えば担当分野商品の変更乃至終了等があったものと推定されます。

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図1 久保グループの出願数年次推移

 

④活動実績Ⅱ(特許網の形成)


表3は、久保真澄 氏とそのスタッフの活動実績を特許網として示したものです。特許網は、最初に出現した新しい内容の特許を「基本特許◆」とし、以後この基本特許に類似する特許として出現した特許を「構成特許◇」としてグループ化した集合(特許群)を表現したものです。時系列的にどのように新しい内容の発明「基本特許◆」が出現し、それをどのように「構成特許◇」で補強して特許群として構築していったかを示しています。

 

主な特許網として、液晶封入行程の大幅な時間短縮が図れる液晶表示装置とその製造方法に関する特開平11-038394、画素電極と共通電極との間で短絡等の欠陥が生じた場合に、該欠陥を修正し、かつ、表示部品の損失を最低限にするIPSモードの液晶表示装置の製造方法等に関する特開平11-125840及び広視角特性を有し、高表示品位の表示を行う液晶表示装置及びその製造方法に関する特開2001-343647を基礎特許とする特許網が形成されています。

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表3 特許網形成状況

 

⑤開発技術


図2は、久保真澄 氏とそのスタッフの主要開発技術の年次推移を示したものです。開発技術をテーマコード(特許文献を技術範囲ごとに区分するための記号)で示してあります。

 

2つのピークが存在し、最初のピークの中核的技術は90年代中頃から継続的に活動が行われている2H191(旧2H091液晶4(光学部材との組合せ))と2H092(液晶5-1(電極、接続導体、光導電層))、残りの中核的技術は2004年に出願ピークがある2H290(2H090から分割 液晶3-2(配向部材))等に関する技術です。

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図2 主要な開発技術

 

⑥特許出願動向


調査対象である久保真澄 氏の特許出願動向を表4に示します。

 

Fターム数が、1998年~1999年と2003年~2004年に急激に増えており、これらの時期に担当商品について細かい観点から改良が行われたものと推定されます。また、新規Fターム数もこの両時期に増加しており、基本的な技術が確立されたと考えられます。

 

発明者数的には比較的中堅規模の組織です。

新規発明者数は、1996年に増員され集中的に開発が進められたことが窺えます。その後は安定した状況で業務を遂行できた組織と思われます。

単独発明が2003年~2006年に見られます。この頃に管理職的立場についた人物と考えられます。

共同出願件数がないので、大学、研究所、他企業との関係は認められません。

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表4 特許出願動向表

 

注1:ニューエントリ(新規)の数字の1994年の欄の数字は、統計表の開始年のためすべて直上の欄の数字と同一です。

注2:出願人数:通常は勤務会社のみが出願人で出願人数1ですが、共同出願人が1つあると+1となります。

注3:単独発明件数:発明者が1人で共同発明者がいない件数です。

注4:単独出願件数:出願人が勤務会社のみで共同出願人がない件数です。

注5:出願件数の( )内の数字は先頭発明者としての件数です。

 

久保真澄 氏のプロフィール

調査対象者の久保真澄 氏は、勤務企業の全社研究開発組織のなかで、構成員数及び公開特許件数ともにトップの【チーム番組005】に所属しています。2003年~2006年に単独発明が見られるものの、大半が共同発明です。おそらく、この頃に管理職的(マネージャ的)立場に就いたと推定されます。共同出願件数がないので、大学、研究所、他企業との関係は認められません。

 

開発技術としては、液晶表示装置の構成全般に関する技術及び広視野角特性等に関する技術等(図2)に注力していることが窺える。1998年に出願件数の大きなピークが見られる液晶表示装置の構成全般に関する技術開発では、1996年に多数の発明者を投入して、一気に開発を進めたことが窺えます。その後、広視野角特性等の技術開発へ注力したことが窺えます。当該技術開発では、先頭発明者や単独発明者としての出願件数が多いことから(表4)、中心的な役割を果たしたものと推察されます。

 

以上


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